『機動戦士ガンダムSEED』この物語の魅力は、アスラン・ザラと言う人物に集約されている。
表向きにはキラ・ヤマトとの2トップではあるが、個人的にはもう「迷えるアスラン・ザラ」が真の主人公ってことで手を打っていいんじゃないかと思っている。
この後の本文は、少なからずネタバレを含む記事となっているので、未視聴の方はご注意いただきお読みください。
『機動戦士ガンダムSEED』のストーリーは、遺伝子操作によって生まれたコーディネーター(ザフト軍)VS 従来の人間 ナチュラル(地球軍)という基本的には分かりやすい構図で幕が開ける。
キラ・ヤマト自身はコーディネーターでありながら、ナチュラルの友人らを守るため半強制的かつなし崩し的に地球軍ガンダム(ストライク)のパイロットとなり、ザフト軍と戦うことになる。
対してザフト軍に所属するアスラン・ザラは自国(プラント)を守るため、地球軍から奪取したガンダム(イージス)のパイロットとなり戦う。
思いがけず敵同士として再会した旧友の2人は、友だちと戦いたくない気持ちと、敵を討たねばならない使命感の狭間で揺らぎながらも前線で戦い続けるのである。
わたしがアスランを真の主人公だと言い切る理由は何と言っても彼の「迷い」にある。
アスランは作中の約8割を悩み、迷うことに時間を割いている。
一貫して迷っているのだ。
もちろんキラが迷わないわけじゃないけれど、アスランの迷い方はそれはそれは清々しいのである。
「迷えるアスラン」を表す彼のセリフを紹介しよう。
「間違ってるのか正しいのか、何が分かったのか分かっていないのかそれすら今の俺にはよく分かりません。ただ、自分が願っている世界はあなたがたと同じだと今はそう感じています。」
『機動戦士ガンダムSEED』第39話より
フラガ少佐に共に戦う覚悟を問われた時のこのセリフ。
39話目だと言うのにまだ何も分からないままなのである。何と言うやつだ。
しかしながら迷いはアスランの「変化」となり、変化はドラマを作りだす。
アスランが作り出したドラマのひとつとして、戦友ニコルの死がある。
自分を慕ってくれていたニコルの死を目の当たりにするまで、俺はキラと戦いたくないのに…‼︎と迷い本来の力を発揮できずにいたアスラン。
その自分の甘さがニコルを殺してしまったことへの後悔から迷いを断ち切りSEED(覚醒)状態となったアスランの強さと言ったら、強いのなんの。
同じくSEED状態のキラと互角、いやそれ以上の戦いっぷりであった。
その後も(元)婚約者のラクスに「アスランが信じて戦うものは何ですか?」と問われて迷い、プラントの最高指導者である父との関係にも思い悩んでいる姿が描かれる。
「何故なんだ…」「分からない…」というセリフを何度も繰り返すアスランは、作中迷わずにいる姿の方がレアなのである。
アスランが迷うことによって、コーディネータ VS ナチュラルと言う分かりやすい構図だったはずの物語がいつの間にかややこしくなる。
迷いを断ち切った時の半端ないその強さ故、アスランがつく側の戦力は倍増し戦局をさらに混乱させている。
まるでトラブルメーカー。いや、メークドラマと言うべきか。
「迷う」その姿は人間のリアルを表現していて肩入れしたくなる。
戦い方も泥臭くて好きだ。
白兵戦(近接戦闘)での銃やナイフさばきもキレてるし、モビルスーツ戦ではイージス、ジャスティスともに自爆させてまでも徹底的にやっつけようとするそのぶっ飛んだ戦法。
普段は冷静沈着、真面目な彼が「運命の出会い」をしたカガリにだけ見せる、喜怒哀楽の表情豊かな一面には思わず心が緩んでしまう。
わたしはそんなアスラン・ザラに心惹かれっぱなしなのだ。
また物語のキーとなるセリフがアスランに向けて発せられることが多いことにも注目したい。
例えば
「何と戦わねばならないのか。戦争は難しいですわね。」
『機動戦士ガンダムSEED』第12話より
婚約者であった頃のラクスの言葉。
敵を見定めることの重要性をアスランに説いています。
「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それでほんとに最後は平和になるのかよ!」
『機動戦士ガンダムSEED』第29話より
カガリのこのセリフは、まさに『機動戦士ガンダムSEED』が伝えたかったことの一つなのだろう。
「アスランが信じて戦うものは何ですか?」
「敵だと言うのならわたくしを討ちますか?ザフトのアスラン・ザラ!」
『機動戦士ガンダムSEED』第34話より
元婚約者となったラクスのセリフ。
アスランは本当はどちらの側につきたいのか?
何のために戦うのかを改めて問いただされる。
「逃げるな!生きる方が戦いだ!」
『機動戦士ガンダムSEED』第48話より
カガリのセリフ。
死んでしまったらそこで終わりなのだ。
生きて戦えという、父を亡くしたカガリならではのストレートなメッセージが心に響く。
このように登場人物たちが次々とアスランに重要な言葉を投げかける。
彼らは迷えるアスランを通して、視聴者であるわたしたちに考え、行動することを訴えているのだ。
アスランが真の主人公でなくては、ガンダムSEEDにドラマは生まれないと言う事実がお分かりいただけたであろうか。
迷えるアスランは、いつの日か「答え」を探し出すことだろう。
彼はSEEDを持つ者故。
『機動戦士ガンダムSEED』は全48話。
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